女性の更年期の不調に対する、漢方治療の得意分野は、イライラやうつ状態、倦怠感、頭痛、夜間の中途覚醒といった幅広い不定愁訴やメンタルの不調です。漢方薬には「生薬(しょうやく)」と呼ばれる自然界にある植物や鉱物等に含まれる薬効成分が複数配合されています。そのため、一種類の漢方薬でも様々な症状に効くのです。
漢方薬は、私たちに馴染みのある西洋薬とは違う考え方のもとに処方されます。そもそも漢方では、心身の不調を「気(き)・血(けつ)・水(すい)のバランスが崩れた状態」と捉えています。「気(き)」とは、目に見えないけれども、身体の中を一定のペースで巡っている生命エネルギーのことです。「血(けつ)」はいわゆる血液で、全身を巡りながら栄養分や酸素を送る働きがあります。そして、「水(すい)」は血液以外の水分のことで、津液(しんえき)と呼ばれ全身を潤しています。
さらに漢方では、生殖能力や、体内の余分なものを排泄する器官のことを「腎(じん)」と呼びます。女性ホルモンが減少する更年期は、気と血が不足したえい、巡りが悪くなったりします。さらに、腎の働きも低下するため、様々な不調が現れると考えられているのです。
このような漢方独自の観点からみた体質のことを「証(しょう)」と言います。「証」には、体力のある「実証(じっしょう)」、体力がない「虚症(きょしょう)」、その中間の「中間証(ちゅうかんしょう)」に分けられます。漢方では、その人の体質に合った薬を選ぶことがとても重要で、漢方の専門医は、患者様の証を細かく見極めて薬を処方するのです。
女性の更年期症状に効く代表的な漢方薬が「加味逍遙散(かみしょうようさん)」です。「逍遙」とは「うろうろ歩き回る」という意味で、その名の通り更年期の移ろい変わる症状に対して有効な薬です。使ってみた人全体の約74%が効果を感じているという報告もあり、更年期症状に対しては効果がある可能性が一番高いとも言えます。迷ったらこの薬を試してみるのもいいかもしれません。加味逍遙散は、とくに体質が虚弱で精神不安がある方に適しています。また、めまい、夜間の中途覚醒のほか、イライラ、落ち込み、不安といったメンタルの症状、冷え性などにも効果を発揮します。
「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」の得意分野は、頭痛やのぼせ、ほてりであり、約70%の改善率が報告されています。
「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」は、めまい・立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷えなどの更年期症状を改善させることで有名です。こちらは約65%の人に効果があったと報告されています。
その他にも、体質を整え、更年期症状の改善に役立つ漢方薬は各種ありますので、症状に合わせて選ぶと良いでしょう。以下に、更年期症状に効果のある漢方薬を掲載させて頂きます。
★加味逍遙散(かみしょうようさん)…体質が虚弱で疲れ易く、精神不安がある人に。
★桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)…頭痛やめまい、のぼせ、肩こりの軽減に。
★当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)…体力がなく、冷え性で疲れやすい人の不調に。
★桃核承気湯(とうかくじょうきとう)…強いのぼせやイライラ、頑固な便秘、肩こりの緩和に。
★抑肝散(よくかんさん)…更年期のイライラや怒りっぽさを抑え、不眠を改善。
★甘麦大棗湯(かんばくだいそうとう)…心の不安や興奮状態を鎮めて、リラックスさせる。
★女神散(にょしんさん)…のぼせやめまいに用いられ、ホットフラッシュの軽減に役立つ。
★温清飲(うんせいいん)…血行を促し、皮膚の乾燥を防いで手足のほてりを鎮める。
★柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)…精神的に不安定で抑うつ感の強い人の症状を緩和する。
★加味帰脾湯(かみきひとう)…体力がなく、血色がよくない人の倦怠感や不眠に効果的。
★防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)…水太り気味の人の多汗、倦怠感、肥満などの改善に。
★補中益気湯(ほちゅうえっきとう)…倦怠感や食欲不振をサポートし、体力の低下を防ぐ。
また、漢方薬どうしを組み合わせて使うこともあります。例えば、更年期の症状全般に加味逍遙散を使い、さらに「やる気が出ない」という人に“補剤”という形で他の漢方薬を使ったりします。漢方薬は、8週間から12週間は続けてみたいと効き目を実感しにくいものです。また、漢方薬は食前・食間の空腹時に、白湯かお湯に溶かして飲むのが基本です。
漢方薬は医師の処方箋がなくても購入することは可能です。漢方薬局ほか、ドラッグストアでも購入できますが、その場合はご自身で全額負担(10割負担)することになります。日本は漢方を国が認めた治療法として採用している世界でも珍しい国です。医療用の漢方薬(=医師の処方箋による漢方処方)は、健康保険適用の薬として既に40年以上の歴史がありますので、健康保険適用の漢方薬をお勧めします。何故なら、先述のように、漢方薬はある程度長く飲み続けて効果を発揮するものなので、継続できばければその効果を十全に得ることができないからです。その点、健康保険適用の漢方薬なら、費用的にも続けられやすいので、まず一度、漢方も扱っている医療機関にご相談されてみてられて下さい。自分の体質や症状に合った薬を選んでもらえ、かつ費用的にも無理な続けることが出来ます。

月経前症候群(PMS)、PMDD(月経前不快気分障害)、
うつ病、躁うつ病(双極性障害)、不安症、適応障害、
睡眠障害(不眠症)、摂食障害(過食症)、パニック症、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
統合失調症、強迫症、過敏性腸症候群(IBS)など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
なお、漢方薬による治療をご希望の患者様は、
診察時に医師の方にぜひご相談下さい。当院のような心療内科では、
健康保険適用で処方することも可能です
監修者:
新宿ペリカンこころクリニック
院長 佐々木 裕人
資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医
所属学会:日本精神神経学会
参考引用文献:高尾 美穂著『いちばん親切な更年期の教科書』


