自律神経系という言葉が使われ始めたのは1898年頃のことですが、当時は遠心性神経の交感神経系と副交感神経系、さらに第3の自律神経と言われる腸管神経系のみが分かっており、求心性神経(内臓求心性繊維)については解明されていませんでした。
その後、自律神経に求心性神経があることが分かり、さらに最近では、腸管神経系の詳細も分かってきています。腸管神経系は、脳や脊髄に繋がっていない、腸の中に独自に存在する自律神経です。
そして、自律神経系を交感神経系、副交感神経系、及び、腸管神経系に分類したのは、ジョン・ニューポート・ラングレイ氏(1852-1925)です。
胃、十二指腸、小腸、大腸などの消化管は、食道から直腸までの消化管壁の筋肉(平滑筋)のリズミカルな収縮運動(蠕動運動)によって、口から入った食べ物を消化・吸収しながら肛門へと運んでいく器官です。腸管神経系は、消化管壁などに存在する神経ネットワークで、腸管の筋肉と筋肉の間にあり神経叢(しんけいそう:神経細胞が集まっている場所)である「アウエルバッハ神経叢(筋層間神経叢)」と、粘膜層の下にある「マイスナー神経叢(粘膜下神経叢)」の二つの神経叢からなります。交感神経系や副交感神経系と連携しながら、消化管の蠕動運動や粘膜における水や電解質の制御を、中枢神経系を介さずに、自律的に行うことができます。
腸管神経系を構成する神経細胞(ニューロン)の数は、1億とも10億とも推定されており、脊髄に存在する神経細胞の数に匹敵します。腸管神経節には、神経細胞とグリア細胞が存在し、中枢神経系との構造が似ています。
消化管を動かす第二の脳
通常、感覚器の末梢神経で検出した情報は中枢に伝えられ、脳での判断を元に、末端の筋肉などの動きがコントロールされます。しかし、腸管神経系では、消化管で感知した物理的・化学的変化の情報はその場で統合され、脳の判断を経ずに消化管の平滑筋を動かして蠕動運動をさせたり、粘膜から分泌液や消化液を産生したりする反応を起こしたりします。このような独立した機能を持つため、腸管神経系は、「第二の脳」あるいは、「小さな脳」などと呼ばれることもあります。
しかしながら、当然、腸管神経系の全てが中枢神経系とは独自に行われているわけではなく、交感神経系や副交感神経系を介して中枢神経系との情報のやり取りを行っています。
例えば、急激なストレスで交感神経の働きが活発になると、それに伴って副交感神経系の働きが抑えられ、消化・吸収機能が抑制されます。発表会や試験の直前などに急にお腹が痛くなったりするのも、心が感じた過度な緊張がストレスとなって、交感神経系と副交感神経系のバランスが崩れることで引き起こされます。また、腸には免疫細胞も多く、ストレスを受けると免疫機能の低下にも繋がります。このように脳と腸はお互いに密接に影響を及ぼしあうことを「脳腸相関」と呼んでいます。
さらに、近年、腸管神経系が、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質を作る働きをしていることも分かってきました。セロトニンが不足することによって起こるうつ病や、ドーパミンの産出が少なくなるパーキンソン病など、一般的に脳・神経の病気だとされている病気にも、腸が大きく関わっている可能性が師さされています。
過敏性腸症候群の方にお勧めの食事とは?
過敏性腸症候群(IBS)は腹痛や腸の不快感が繰り返し起きる病気です。ストレスなどで、自律神経が乱れることで、腸の収縮運動が激しくなり、少しの刺激でも痛みを感じやすくなります。まさに、腸が過敏になった状態です。近年、小腸内で分解や吸収がされにくい糖類(FODMAP:フォドマップ)を避けることで症状の改善に繋がるという研究報告が発表され、注目されています。FODMAPは大腸で腸内細菌の餌となってガスが発生したり、腸内の水分が増加したりすることで、症状を悪化させてしまうようです。
避けた方が良い「高FODMAP食品」例としては、ヨーグルト、うどん、りんご、きのこ等が挙げられており、推奨される「低FODMAP食品」例としては、チーズ、そば、ブロッコリー、ベーコン等が挙げられています。腸が弱い方の中には、無条件に「ヨーグルトはお腹に良い」と思われている人も少なくないと思いますが、実はヨーグルトは全ての体質に対しての万能食品ではないことを、心の片隅に置いていて頂けましたら幸いです。
当院では、自律神経失調症をはじめ、
過敏性腸症候群(IBS)、うつ病、躁うつ病、不安症、
パニック症、摂食障害(過食症)、適応障害、
月経前症候群(PMS)、統合失調症、強迫性障害、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
不眠症(睡眠障害)、更年期障害、心身症など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
なお、漢方薬による治療をご希望の患者様は、
診察時に医師の方にぜひご相談下さい。
当院のような心療内科では、
健康保険適用で処方することも可能です。
監修者:
新宿ペリカンこころクリニック
院長 佐々木 裕人
資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医
所属学会:日本精神神経学会
参考引用文献:『Newton 別冊 体を整える自律神経の取扱説明書 改訂版』


