脳の報酬系への影響は人によって様々です。また、生育環境も人によって大きく異なるため、ADHDの行動面の症状も多種多様です。日本における診断にも用いられている、アメリカ精神医学会の2013年に制定したDSM-5の診断基準には、不注意や多動性や、衝動性の持続的なパターンがあることと、症状のいくつかが12歳以前から認められること、障害が家庭や学校、職場などの2つ以上の状況で確認されなければならないことなどがあります。
ADHDの3つの行動特性
ADHDには、「多動」、「衝動」、「注意欠如」の主に3つの症状が表れます。但し、これらの3つの症状は、同時に全てあらわれるというわけではありません。「多動」が目立つ場合もありますし、「衝動」が目立つ場合もあります。また、「注意欠如」が症状として強く出る場合もありますし、全ての症状があらわれることもあります。
このようにADHDの症状のあらわれ方は様々なのです。また、成長の途中ではある症状が抑えられたり、症状が目立たなくなったりします。ADHDの行動特性は主に3つのタイプに分けられますが、多動、衝動、注意欠如の3つの特性を併せ持った混合型のタイプがほとんどを占めているとも言われています。
ADHDの主な3つのタイプ
➊ 多動・衝動性優勢型:女性よりも男性に多く見られるADHDの特性です。多動性が優勢な人は、落ち着きがなく、じっとしていることが出来ないという特徴があります。衝動性が優勢な人は、自分の感情の調整や抑制が苦手な人も多く、考える前に行動するなど衝動的に動く人もいます。そのため、物事の優先順位を決められないという人もいます。
➋ 注意欠如優勢型:男性よりも女性に多く見られるADHDの特性です。集中や注意を長い時間維持することが出来ないため、子どもの頃は、他の子どもに比べると学習が遅れがちになります。何か行動する時に集中し続けられないため、忘れ物が多くなったり、物を失くしたりすることが少なくありません。また、整理整頓などが苦手という特性も持っています。
❸ 混合型:多動性や衝動性、注意欠如という3つの特性を全て持ち合わせているタイプです。人によって特性のあらわれる度合いには差があります。例えば、自分の興味があることの場合に急に多動性や衝動性があらわれたりします。反対に、自分の興味のないことになると、急に注意欠如の特性があらわれたりすることもあります。
多動・衝動性優勢型ADHDの行動特性
アメリカ精神医学会が用いているDSM-5の診断基準では、多動性や衝動性の診断は16歳までの子どもでは6つの症状、17歳以上の若者や成人では5つ以上の症状が、家庭や職場など2つ以上の場所で少なくとも6か月間続くことなどを診断基準としています。
その診断のもとになる症状は、あらゆる行動に渡ります。例えば、座ったままじっと出来ないので席を離れたりする。指を動かしたり、貧乏ゆすりなどして足を動かしたりする。周囲が走りまわるような状況ではないのに、走りまわったり、落ち着きがないような状況をあらわしたりする……等といった行動が挙げられます。他にも、順番を待つことが出来なかったり、相手の質問が終わる前に答えたり、過度に話をしたりするなどがあります。また、他人のしていることに横やりを入れるのもしばしばで、静かに過ごすことが出来ないという特性があります。
例えば小学生になると、1コマ45分の授業を受けるのが一般的ですが、多動性・衝動性優勢型ADHDの特性が強いと、その間じっと座っていることができません。このことから、1時間前後の間、座っていられるかどうかをADHDの判断の一つの目安とする医師もいます。
こうした特性は時に、集団生活の中において、避けられたり嫌われてしまったりする原因となることもあり得ます。疎外感から、他者に対する怒りを示したり、問題を解決するよりも開き直ったりすることで、さらに孤立を強めていきます。それが原因でいじめにあったり、逆に誰かをいじめてしまったりして、中々集団生活に適応することが出来なくなることもあります。また、そうしたことから、インターネットやアルコール等への依存に結びついてしまうこともあります。疎外感を抱いて社会から孤立しないように、即ち、孤独な状態を作らないことが肝要です。
注意欠如優勢型ADHDの行動特性
常に落ち着きがなくソワソワしている多動優勢型に対して、ぼんやりしているように見えるのが注意欠如優勢型の特性と言えるかもしれません。例えば、誰かに話し掛けられてもボーッとしていて、聞いているのか、それとも聞いていないのか分からないように見えるのも、注意欠如優勢型の特性と言えるでしょう。
DSM-5の診断基準では、次のような行動の特性が長期的かつ頻繁に続き、他の疾患と比べても特徴的だと判断された際、注意欠如優勢型と判断されます。まず、細部に細心の注意を払わなかったり、学校や職場において不注意が原因のトラブルを起こしたりすることです。やらなければならないことに集中し過ぎたり、目の前の活動に注意を払い続けることが難しかったりすることが多いとされています。このため、仕事の面では指示に従ったり、集中力を持続することができず脇道に逸れやすく、時間内に仕事を終わらせることが出来なかったりします。また、プロジェクトのような長時間の精神的な努力を必要とするような業務を嫌がることがあります。
忘れ物が多いのも注意欠如優勢型の行動特性でもあります。例えば、学校の授業や仕事などで必要な道具を忘れがちというのも行動の特性です。忘れ物をしたり、失くしたりするのは主に身のまわりの身近なものであることが少なくありません。教材や筆記用具、授業に必要な本や、財布や鍵、スマートフォン、眼鏡、仕事で必要な書類…等々、目の前のことに集中し続けられないため、どこに置いたのか分からなくなってしまうのです。
順序立てて物事を整理出来なかったり、大事なものと不要なものの区別がつかなかったりして、部屋に物が溢れ、足の踏み場もないような状態になってしまうことも少なくありません。一人暮らしの場合は、ゴミ屋敷のような部屋に住んでいる人もいます。
混合型ADHDの行動特性
多動・衝動性優勢型と注意欠如優勢型の症状を併せ持つタイプが混合型と言われます。ADHDの症状が出ている人の8割がこの混合型ADHDの特徴を持っていると言われています。このため、同じADHDの人でも個人により症状が大きく異なっています。アメリカ精神医学会のDSM-5の診断基準では、多動・衝動性優勢型と注意欠如優勢型の両方の症状が6か月間続く場合は、混合型に分類されます。
混合型ADHDの人は、多動・衝動性優勢型と注意欠如優勢型の行動特性がありますが、どちらの行動特性が出ているのかは、人によって異なります。例えば、人の話を一方的に話し続けたり、脈絡のない行動をしたりするだけでなく、細部への注意や集中が続かず、整理整頓も苦手という人もいます。一方で、いつもぼんやりしていて、人が話しかけても聞いていないように見える人も、自分の好きな分野や興味がある分野では、急に饒舌になったり他人との会話を遮るような多動・衝動優位性の特徴を見えることもあります。
多動・衝動性優勢型や注意欠如優勢型の行動特性が重複するだけでなく、場合によっては自閉スペクトラム症(ASD)と症状が重複することもあります。例えば、注意欠如による行動特性が出ているだけでなく、決められたスケジュールに沿って行動する、同じ帰宅経路でないと気がすまない…等々といったASDに特有の症状が出ることがあります。また、混合型の場合、ASDやADHDでみられる特性が弱まる場合もあります。ASDとADHDの特性が見られる人では、ある作業に集中しているにも他の作業や好きなことにとらわれる人もいます。つまり、周囲からは「こだわり」というASDの特性が確認できない場合もあるのです。

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監修者:
新宿ペリカンこころクリニック
院長 佐々木 裕人
資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医
所属学会:日本精神神経学会
参考引用文献:『ニュートン別冊 精神科医が語る 発達障害のすべて 改訂第2版』


