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過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)

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過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)

過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)とは、お腹が痛くなり、下痢や便秘、またはその繰り返しが持続する疾患です。 大腸内視鏡検査などの精密検査をしても、異常が認められないことが前提となります。 つまり、通常の検査では問題ないのに、お腹の症状があるのです。 これは、大腸の運動、知覚、また分泌機能の異常で起こるとされています。 現在、日本では人口の約14%にみられるとされますので、一般的な予想よりとても多いことがわかります。 男女比は、約1:2で、やや女性に多い傾向があります。

【原因】

正確な原因は、まだ不明です。 ただ、“脳腸相関;brain-gut interaction(または、脳腸軸;brain-gut axis)”が関与していると考えられています。 これは、脳と腸がお互いに関係しているということです。 特にIBSでは、腸内細菌(腸内細菌叢、腸内フローラ)の異常などがあり、腸から脳に異常信号が送られていることがわかってきました。 腸内細菌が消化管の内部の粘膜細胞を刺激し、それによる信号が脳に伝えられます。 これを内臓知覚と言います。 この一連の伝達経路にセロトニン3受容体(5-HT3受容体)が関係していることがわかっています。 よって、後述しますが、 IBS の治療薬としてこの5-HT3受容体を阻害する薬剤が効果があるというわけです。 なお、実は腸内細菌の中でGABAを作る菌があることも知られてきています。 この菌が少ない児童は、精神疾患、精神障害を有しやすい可能性があります。 よって、腸内環境を整えることで児童の精神疾患が改善する可能性もあると考えられています。 副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)は、ストレスホルモンの1つですが、これが腸の異常運動に影響している可能性があります。 CRFは、脳から腸への伝達経路の最初です。 CRFは、下部消化管の運動を亢進させる可能性があります。 また、腸内細菌にも何かしらの影響を与えているようです。

【診断】

世界的には、Rome IV (Functional Gastrointestinal Disorders, 4th ed)の診断基準が広く用いられています。 表現がややこしいですが、要は3か月以上腹痛に便秘または下痢が伴えば、ほぼ該当するということになります。 <RomeⅣ診断基準>
最近3ヶ月間、月に4日以上腹痛が繰り返し起こり、次の項目の2つ以上があること ①排便と症状が関連する ②排便頻度の変化を伴う ③便性状の変化を伴う 期間としては6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月間は上記基準をみたすこと
<鑑別診断> なお、もちろん他の消化器疾患の可能性が考えられる場合は、精密検査が必要です。 例えば、発熱や数kg以上の体重減少を伴う場合や、壮年期での発症、明らかなストレス因がない場合などです。 これらがみられる場合は、消化器内科などで腹部CT、大腸内視鏡検査などが検討されます。

【分類】

<RomeⅣ分類> 以下の4つに分類することができます。
1.便秘型IBS(IBS-C): 硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便(泥状便)または水様便が25%未満のもの 2.下痢型IBS(IBS-D): 軟便(泥状便)または水様便が25%以上あり、硬便または兎糞状便が25%未満のもの 3.混合型IBS(IBS-M): 硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便(泥状便)または水様便も25%以上のもの 4.分類不能型IBS: 便性状異常の基準がIBS-C,D,Mのいずれも満たさないもの
男性は下痢型が多く、女性は便秘型が多いと言われています。 また、途中で変わることもあることがわかっています。 【機能性消化管障害(functional gastrointestinal disorder、FGID)】 近年、IBSも含めたより大きな概念である、機能性消化管障害(functional gastrointestinal disorder、FGID)が提唱されています。 これは、検査で特に異常が見つからないにもかかわらず、消化器症状(腹痛、便秘、下痢など)が持続するものです。 特に下部消化管(小腸から直腸まで)の中に機能性腸障害があり、過敏性腸症候群のほか、機能性便秘、機能性下痢、機能性腹部膨満などが含まれます。 IBSの診断基準を満たさない場合は、IBS以外のFGIDのどれかということになります。 機能性便秘:腹痛のない便秘 機能性下痢:腹痛のない下痢 機能性腹部膨満:便通異常のない腹部膨満感 中枢性の消化管痛障害:便通異常のない腹痛 【併存疾患】 圧倒的に多いのが、精神疾患、精神障害で、IBSの半数以上に認められます。 代表的なものとして、うつ病、不安障害(不安神経症)、身体表現性障害、睡眠障害(不眠症)があります。 ほかにも、甲状腺ホルモンを産生、分泌する甲状腺の疾患である、機能低下症、甲状腺機能亢進症もあります。 また、女性では妊娠が発見されることもあります。 線維筋痛症、顎関節症、過活動膀胱、間質性膀胱炎、月経異常などもあります。 【予後】 基本的に、良好な経過をたどることが多いです。 ただ、一部の方は炎症性腸疾患に移行することがあるので、注意が必要です。

【治療】

①食事療法 食物繊維の多い食事が有効です。 1日に約30g以上の食物繊維をとるとよいとされています。 ただし、一部の方には逆効果という報告もありますので、徐々に具合を見ながら増やすべきでしょう。 また、便秘型は有効ですが、下痢型や腹痛改善にはあまり有効でないという意見もあります。 また、豆類、イモ類の食物繊維は不溶性で、かえって腹部膨満感が悪化することもあることがわかってきています。 ガスが少なくなるような食事もすすめられます。 単糖類や二糖類(果物、はちみつ、砂糖など)、発酵性のもの、玉ねぎ、ばなな、さつまいも、アルコール、カフェインも避けた方がよいとされます。 ヨーグルトは、二糖類が入っているものの、乳酸菌も入っているため、一概には結論が出ず、個人の体質にもよると考えられています。 脂肪も避けましょう。 頻度は少ないものの、乳糖不耐症やグルテン不耐症が認められる場合がありますので、特に下痢型の場合は、乳糖フリー、グルテンフリー食をトライしてみると改善する可能性があります。 炭酸飲料、香辛料もなるべく避けた方がよいです。 分食といって、1回に食べる量をあえて減らし、回数を多くすることもよいです。 食事の記録表をつけることで、自分の体質と何が合わないかがわかりやすくなります。 ②薬物療法 ②-1:よりIBSに(消化管に)特化したもの [全てのタイプに用いることが可能なもの] ・乳酸菌(ラックビー):プロバイオティクスと呼ばれるものです。腸内細菌のバランスを改善させる効果が期待できます。 ただこれが直接IBSを治療できるかというのはまだ結論は出ていません。 そうは言っても安全性が極めて高く、医薬品としての価格も安いので、処方されることが多いと思われます。 ・トリメブチン(セレキノン):消化管運動調節薬と呼ばれるものです。胃腸の運動を促進して、胃から腸に食べ物を送り出すのを助けます。逆に腸の運動が亢進している場合は、鎮まるように働きます。一般的には、低用量で運動を促進させ、高用量で運動を抑制します。 ・ポリカルボフィルカルシウム(コロネル):高分子重合体というものです。 腸管内の水分を吸収してゲル状になり、適度の水分を保ったまま他の便ともに排便されることで、便通を改善させます。 便秘型にも切り方にも有効です。 [下痢型に用いるもの] ・ラモセトロン(イリボー): セロトニン(5‐HT3)受容体選択的阻害薬です。セロトニンは脳から腸、および腸から脳への両方の伝達に関わっています。 まず、脳から腸に関しては、消化管に存在するセロトニン(5‐HT3)受容体を遮断することで、大腸輸送能亢進や大腸水分輸送異常を改善し、排便亢進や下痢を抑制します。 また、 腸から脳に関しては、大腸痛覚の伝達を抑制し、腹痛や内臓知覚過敏を改善させます。 つまり、便通異常と腹部痛を共に改善することが期待できるとされています。 なお、このお薬が効き過ぎると、便秘になったり、硬い便が出ることがあります。 特に女性に多い傾向があります。 もし3日以上連続して排便がない、便に血が混じるなどの場合は、服薬を中止し、主治医に連絡してください。 ・ピコスルファート(ラキソベロン):代表的な下剤の1つで、 刺激性下剤というものです。 大腸粘膜を刺激して蠕動運動を起こさせます。長期間の連用により、刺激性が低下し、増量が必要になる傾向はあります。 ・ロペラミド(ロペミン):代表的な止痢薬です。 [便秘型に用いるもの] ・酸化マグネシウム(マグミット、マグラックス):浸透圧性下剤と呼ばれるものの代表格です。 腸管から吸収されにくく、浸透圧作用を利用して腸管からの水分を吸収して、腸内内容物(便)を軟化させます。 浸透圧を利用するので、しっかり飲水しないと効果が十分には発揮されません。習慣性、連用性は低いと言われています。 腎障害を有していると高マグネシウム血症の可能性がありますので、適宜血液検査などでチェックすることが必要です。 ・ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン):上述 ・ルビプロストン(アミティーザ):腸管粘膜に作用し、小腸液の分泌を促進させます。そうすることで、便の水分が増え軟化し、排泄されやすくなります。 刺激性下剤でみられる習慣性、耐性がつきにくいとされています。 また、 センナなどを長期間使用した場合に見られるとされる大腸メラノーシス(大腸黒皮症)も、起こりにくいとされています。 ・モサプリド(ガスモチン): セロトニン5-HT4受容体刺激薬です。セロトニン5-HT4受容体は胃や十二指腸に存在しており、これを刺激することで、胃腸の運動が活発になります。 [腹痛に用いるもの] ・トリメブチン(セレキノン):上述 ・ラモセトロン(イリボー):上述 ・モサプリド(ガスモチン):上述 ②-2:精神面に作用するもの(向精神薬) ・抗うつ薬:状況にもよりますが、一般的には選択的セロトニン再取り込み阻害薬( Selective Serotonin Reuptake Inhibitors, SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(Serotonin & Norepinephrine Reuptake Inhibitors; SNRI)、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant,NaSSA)と呼ばれる種類のものが処方される傾向があります。 代表的なSSRIは、セルトラリン(ジェイゾロフト)、エスシタロプラム(レクサプロ)、SNRIは、デュロキセチン(サインバルタ)、ベンラファキシン(イフェクサー)、NaSSAはミルタザピン(リフレックス)があります。 ・抗不安薬:なるべくマイルドなものが選択されることが多いと思います。 クロチアゼパム(リーゼ)などがあります。 ③カウンセリング(セラピー、心理療法) 症状や背景にあるストレスの原因に応じて行います。 最近広まってきているものとして、認知行動療法があります。 これは個人個人が持っている認知のクセ(一定の方向に思い込みやすいクセ)を見つけて、それを中道に修正を図り、行動の変化も促す、というものです。