休職は余暇ではなく、療養のためのものです。治療の妨げになることは勿論、周囲の誤解を招くようなことも避けた方が良いでしょう。
例えば、これは実際によくある話ですが、医師によっては治療の補助として「アニマルセラピー」や「ホースセラピー」などが勧められることもあります。ホースセラピーで、馬に乗って大きな命を感じると、ぽっかり空虚だった心が温かく満たされるような安らぎを感じられたり、自分の命について思いを馳せられたりと、気力回復に素晴らしい効果をもたらしてくれることがあります。ただ、これを「乗馬をしてきました♡」とSNSにアップしたらどうでしょう。同僚が目にしたら「元気そうなのにまだ復帰しないの?」「仕事をしないで遊んでる…」とあらぬ誤解を受ける恐れもあります。こうした誤解がもとになって、復職後の人間関係がギクシャクしてしまったとしたら、こんな損なことはありません。
当然ながら、SNSに会社への鬱憤や内部情報を書き込んだりすることも厳禁です。匿名であっても、誹謗中傷にあたるようなものは発信者が特定されることがあるのは、周知の通りです。トラブルを防ぐため、休職者に対して「SNSでの書き込み、活動報告はしない」という誓約を求める企業もあるほどです。

また、大分調子が戻ってきた「回復期」に多いトラブルとして、副業の発覚が挙げられます。「元気になってきたし、友だちに頼まれたシステム補修で腕慣らしをしてみよう」というように、リハビリのつもりで仕事をしている、といったケースも起こり得ます。しかし、休職中に他社に労務提供をするのは、労働契約に反します。こうした事実が明るみに出て、傷病手当の返還命令が下ることもあります。「デイトレードで相当な利益を出しているらしい」「休職体験をブログに書いて、アフェリエイトで広告収入を得ている」など、休職制度を利用して利益を得ていると思われる場合には、会社側から訴えられる可能性も出てきます。私利私欲に繋がるようなことは慎みましょう。
治療に関しては、主治医を信頼し、治療方針をよく理解することが重要です。特に、発症後(あるいは、休職に入って)間もない時期は、日内変動が顕著に見られることがあります。午前中は、頭痛や吐き気、倦怠感などで起き上がれないほどなのに、昼過ぎになると徐々に元気になってきて、夕方以降は気力も十分! 何でもできるような気分になって、家事や育児を手伝ったり、友だちと外出したり、深夜まで趣味に没頭してしまったり……。「自分は夜型人間なだけで、別に病気なわけではないんだ」と勘違いしてしまう人もいます。
しかし、この日内変動こそ、メンタル不調に特徴的な症状のひとつなのです。自己判断で通院を止めてしまったり、復職を急いだりするのは危険です。主治医の先生の説明によく耳を傾け、自分の症状を理解しましょう。そして、まずはこの日内変動が改善するよう、活動記録表や生活記録をつけて、規則正しいリズムを取り戻すこと、時には薬の助けも借りながら、質の良い睡眠をとるように心掛けて下さい。
眠れないからとアルコールに頼ったり、眠気覚ましにコーヒーや栄養ドリンクを大量に摂取したり、ストレス解消にとタバコをふかしたりするのは、身体にも負担が掛かる上、却ってフラストレーションが溜まります。
メンタル不調時は、情緒も不安定で、判断力も鈍っている可能性が高いです。重要な局面で判断が必要になったら、自分ひとりで判断しない、自分だけで解決しようとしない、ということが大原則です。

……上述の内容をまとめると、以下の「休職中にしない方が良いこと5か条」となります。
➊「SNSへの書き込み」:特にレジャーと誤解されそうなもの、会社への誹謗中傷と捉えられないものは控えましょう。
➋「副業なので収入を得る」:休職中に他社から収入を得るのは、労働契約違反になります。傷病手当の返還を命じられることもあります。
❸「自己判断での減薬・断薬」:医師から処方された薬は、用法・用量を守って服薬をしましょう。自己判断での減薬・断薬は、症状の悪化や治療が長引く原因にもなります。
❹「カフェイン、アルコール、ニコチンに頼る」;眠気覚ましにカフェイン飲料を過剰に摂取したり、眠ろうとしてアルコールに頼るのは、逆効果をもたらします。タバコの吸い過ぎもフラストレーションを増悪させてしまいます。
❺「大きな決断をする」:メンタル不調時は、判断力が低下しがちです。結婚、離婚、転職、退職などの大きな決断は、回復後、周囲とよく相談してからにしましょう。

当院では、適応障害をはじめ、
うつ病、躁うつ病、睡眠障害(不眠症)、不安症、
心身症、自律神経失調症、強迫症、統合失調症、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)、
過敏性腸症候群(IBS)、ストレス関連障害など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
監修者:
新宿ペリカンこころクリニック
院長 佐々木 裕人
資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医
所属学会:日本精神神経学会
参考引用文献:『マンガで分かる休職サバイバル術』


