日々のストレスがメンタル不調にまで発展するには、2つの要素が関わっているようです。それが「つまずき」と「こじらせ」です。
繊細で気がつきやすい人ほど、つまずきやすい
「つまづき」とは、ひと言でいえば不安への耐久力です。繊細で色々なことに気がつきやすい人は、多くの人が無視できるほころびを実際以上に大きく感じてしまったり、小さなトゲに引っ掛かって痛みを感じたりしやすい傾向があります。
例えば、ある朝、同僚に挨拶をしたのに返事がなかったとします。もしかすると、その人はイヤホンをしていて挨拶に気が付かなかったのかもしれませんし、この後のアポイントのことで頭がいっぱいであなたのことが見えていなかったのかもしれません。あるいは、恋人とケンカ中で虫の居所が悪かっただけなのかもしれません。しかし、ここで「避けられている」「嫌われているのかも」という不安が持ち上がると、朝の出来事はその日一日中、どんよりと心に暗い影を落とすことでしょう。
つまづきやすさは、心の免疫力とも言い換えられるのかもしれません。多少の失敗、ゴタゴタ、トラブルがあったとしても、心の免疫力が高ければ「何とかなる!」と受け止めて、前に進むことができます。落ち込むことがあっても、それは軽い風邪の程度であり、ひと晩寝れば気分も持ち直して、大きく引きずることはありません。
一方、免疫力が低いと、感染力の弱いウィルスにも漏れなく罹ってしまい、しょっちゅう熱を出してしまいます。例えば、同僚や取引先の人の仕草や言葉尻を敏感に捉えて、「面倒な人だと思われているような気がする」と心配したり、プロジェクトの軌道修正が必要になると、「自分のシミュレーションが足りなかったせいだ」と自分を責めってしまったり……。こんなふうにあちこちで気持ちをアップダウンさせてしまっていたとしたら、心が疲弊してしまうのも当然です。

強すぎる自己愛が「こじらせ」の要因に
風邪をひいたら、まずは暖かくして消化の良い食事を摂り、ゆっくり眠るのが一番です。ところが、風邪気味なのに遅くまで残業して、週末はサーフィンを敢行。熱が出ても「大したことない」と、いつも通りの生活を続けていたとしたらどうなるでしょう。メンタル不調に陥る「こじらせ」は、風邪に対するこのような対応にも似ています。適切なケアをしないばかりか、さらに無理を重ねて、軽い風邪を肺炎にまで進行させてしまいかねません。
ストレスフルな状況にあっても、休息したり、ストレスを避けたりすることをよしとしなかった結果、心身の限界を超えてしまった状態が「こじらせ」です。こじらせによる傷は深く重なりがちで、治療にも時間が掛かるケースが少なくありません。
こじらせる要因のひとつに、強すぎる自己愛が挙げられます。自分の体力、能力、キャパシティを過信している人は、自分から助けを求められないだけでなく、周囲のフォローや助言を拒絶しやすい傾向があります。さらに、自己評価と周囲からの評価のギャップに苦しむことも起こり得ます。自分を愛することは大切ですが、過度に自分を甘やかしたり、実際以上い高い評価をしたりするのは危険なのです。
周囲の支援を得られない状況が、こじらせを生む場合もあります。「孤立傾向の強い立場、職場でのポジション」「裁量の少ない仕事内容」「連続する偶発的な失敗体験」は、メンタルをこじらせやすい要注意ファクターと言われています。
例えば、管理職になったり、子会社に出向したりしたことを契機に、それまで生き生きと働いていた人が急にメンタルダウンするケースは珍しくありません。
裁量が少ない仕事や職種においては、キャパシティ以上の仕事を任されて押しつぶされてしまったり、逆に能力が発揮できずに悩んだりすることが起こり得ます。「今は上の言う通りにやるしかない」と割り切れてばよいのですが、スパッと切り替えられる人ばかりではありません。
「飛び込み営業で全敗した」といった体験も、こじらせにつながりやすいファクターです。単なる仕事上の失敗だけでなく、自分が全否定されたと感じることの辛さ、怒り、イライラは強大です。「就活うつ」も、このタイプのこじらせの典型例といえるでしょう。
こじらせによるメンタル不調を防ぐには、まず、自身のこじらせやすさを自覚すること。そして、「風邪のひきかけに無理をしない」ようにすることが重要です。即ち、日々のストレスの中で「つまずき」を感じたら、「こじらせ」ないようにしっかり休息をとるようにすることが肝要なのです。

孤立が苦にならない人も、「孤独」には要注意!
多様な働き方が浸透してきた今、会社に所属しながらも、在宅ワークやサテライトオフィスでの仕事が中心で、チームメンバーとリアルに顔を合わせられる機会が中々ない、という人も増えています。以前ならば、仕事の合間を見て気軽に相談できたことも、オンライン中心の働き方では勝手が違います。画面越しやメールでの相談では、何となく温度感が伝わらない、と感じている人も少なくはないでしょう。また、「わざわざこの程度のことで、オンラインミーティングの時間をもらうのは申し訳ない」と遠慮してしまう人もいるようです。
コミュニケーションが取りづらくなることで、必要なフォローが不足したり、相談が滞りがちになってしまったりしたことから、不安を募らせてメンタル不調を発症する若手社員も多くいます。
その一方で、むしろ自分のペースで効率的に進められると、歓迎する人たちも沢山います。それは、「孤立」が苦にならず、自走型で仕事を回せる人たちです。逐一管理されずとも、自己調整をしながら、効率良く進めることが出来るため、却って生産性が挙がったという事例も多いようです。
しかし、そのような「孤立上等」の人たちにとっても怖いのは、「孤独」です。
孤立は物理的・環境的に一人であることを指しますが、孤独は心理的に一人であることを意味します。よく「ぼっち」なんて言葉が使われますが、これもまさに孤独状態を表す表現のひとつです。業務は一人でサクサク進められたとしても、その成果物を誰にも評価されなかったり、放置されたり、あるいは「期待していたものと違う」と非難だけされたり……。こうしたことが起こると、物理的な孤立ではなく、心理的な孤独感が強まります。誰にも理解してもらえない、寄り添ってくれる人がいない、周囲が敵だらけに見えてきてしまいます。出勤して顔を合わせていれば、「先日提出した資料、どうでしたか?」とさり気なく聞けるようなことも、リモートワークではままなりません。孤立によって孤独感はさらに深まり、悪循環に陥ってしまいかねません。
自走・自律型の優秀な人であっても、こうしたコミュニケーションロスからメンタル不調を発症することもあるのです。孤立はしても、孤独にはならないようにすることは、日頃から心掛けておきたいポイントとなるのです。

当院では、適応障害をはじめ、
うつ病、躁うつ病、睡眠障害(不眠症)、不安症、
心身症、自律神経失調症、強迫症、統合失調症、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)、
過敏性腸症候群(IBS)、ストレス関連障害など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
監修者:
新宿ペリカンこころクリニック
院長 佐々木 裕人
資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医
所属学会:日本精神神経学会
参考引用文献:『マンガで分かる休職サバイバル術』


