ADHDの人は狩猟民族と末裔だという話があります。きちんとしたソースがないので、噂話・俗説程度に聞かれて下さい。かつて狩猟を主にしていた時代、人は獲物を捕らえるために、視覚や聴覚から入る情報を敏感にキャッチしていました。あらゆる物音に耳を澄まして、目に入るものを素早く捉えるといった、頭で考えるよりも先に行動することを重視する、まさにADHD的特性が優位に働く環境でした。ところが農耕民族がマジョリティになると、目の前の狩猟よりも、長期的な視座に立った協調性が求められるようになっていきます。これはADHDとしては不得意な分野です。
そのように想像して考えてみますと、ADHD特性を含めた得意・不得意の定義は“環境次第”だということが分かります。ADHD特性が求められ、マジョリティになる環境は、現在でも必ずどこかにあるはずです。

「ADHDの人は、会社勤めは向きませんか?」という質問は往々にしてよくされるものだと言えます。それはまさに「会社によります」としか答えようがないのですが、確かにADHDの特性は、組織という大きな枠組みとは相性が余り良くない部分もあるかもしれません。
今、職場環境がどうしても自分に合わず、努力してもつらいと感じてしまうADHDの人は、思い切って、「好き」を仕事にする方に舵を切ってみるのも一つの考えでしょう。「そんな簡単に言わないでよ」「YouTubeみたいな世界観で語らないでよ」…等と思われるかもしれません。しかしこれは、きれいごとでも何でもなく、たった一度しかない人生の話です。ある意味で、人生とは、自分の「好き」や「転職」を見つけること、あういはその過程そのものであるとも言えないでしょうか?
数字に強い人、プログラミングが時な人、モノ作りに楽しみを見出す人…等々、得意なことは人によって実に様々で、それを仕事に活かすことが出来れば、人生がぐっと豊かになることは、言うまでもありません。そして、得意・不得意が極端に突出しているADHDの人であれば、これが一層顕著です。苦手な作業はとことん出来ないけれども、その代わりに、得意な分野や好きなことには時間を忘れて没頭できて、高い能力を発揮することもあります。
ですから、ADHDの人は、報酬や世間体、その他もろもろの「こうあるべき」を一旦頭から取り払って、自分自身の得意分野について、一度真剣に向き合ってみられることをお勧めします。何故なら、場合によって、努力しても上手くいかないのは、自分のせいではなくて“適性”の問題なのかもしれないと、振り返ってみて欲しいからです。ADHDの特性が有利に働く環境は必ずあります。自分の好きなこと、得意なこと、「これだったら一生努力できる」と自信を持てる分野は何か、ぜひ考えてみて下さい。努力が続かないし、「好き」も見つからない……そんなはずはありません。物理的に時間を使ってしまていた“何か”がきっとあるはずです。時間を忘れて没頭してみて、何か失敗してしまったこと、怒られたこと、心配されたこと…等々、そういったことにもヒントは隠されていたりすます。
加えて言うのであれば、過去の人生を振り返ってみた際、自分が子どもの時に好きだったもの、夢中になっていたものに注目してみるのも一手です。「子どもの頃は電車が好きで、駅に行くのが楽しみだった」「紙と鉛筆さえあれば、何時間でもお絵描きをして楽しんでいた」「駄菓子の袋のデザインが好きで集めていた」…等々。親や周りの人にもぜひ聞いてみて下さい。今の自分の深層にある「好き」のヒントが案外隠されていたりもするのです。

自分の長所を査定する
ADHDの人には、その人が退屈をしない適切な課題を見つける必要があります。これを、その人にとって「最適な課題」と呼ぶことにしましょう。この「最適な課題」を見極めるためには、自分自身の長所、得意なことについて、実際的な棚卸しをすることが一つの前向きな方法です。
手始めとして、まずは、これから行う質問に答えてみましょう。大人の場合であっても、家族や配偶者など、自分以外の大人と一緒に行うと良いでしょう。何故なら、この作業は一人で行うよりも、誰かと共に行う方がより効果的だからです。対話を通して、より創造的でのびのびとした、面白く、深みのある答えを得ることができるのです。質問を出す側になってもらう人には、回答を書き留めてもらいましょう。この回答は、保存必須の重要文書になることでしょう。さて、質問は以下の通りです。
❶ 得意なことを3~4個挙げてみて下さい
➋ 好きなことを3~4個挙げてみて下さい
❸ これ迄で特に褒められた活動や達成した事を3~4個挙げてみて下さい
❹ 大切な目標を3~4個挙げてみて下さい
❺ もっと上達したいことを3~4個挙げてみて下さい
❻ 人には褒められるけれど、自分にとっては当たり前だと思う事は何ですか?
❼ 他の人には大変だけれど、自分にとっては簡単なことがあれば教えて下さい
❽ とても苦手なのに、長い時間費やしていることは何ですか?
❾ 自分の時間をもっと有意義なものにするため、上司(や先生)に何をして欲しいですか?
❿ 自分のことを理解してくれない、と上司(や先生)に遠慮なく言えるとしたら何を言いますか?
これら10個の質問に回答していくことで、非常に沢山のことが分かります。その貴重な情報があれば、自分の雇用者(や教師)に対し、もっと建設的な形で、より良い学習・就労環境に向けた話し合いができるはずです。
大人の場合、この長所アセスメントをキッカケとして新しい仕事を探したり、現在の仕事を見直したりすることができます。その際の指針としては、本当に好きなことの集合と、本当に得意なことの集合、そして自分がやるとお金がもらえることの集合の3つが重なっていり部分に、勤務時間の大半が使えるようにすることです。自分自身の考えをまとめ、この3つの集合が重複する部分を見つけるために、この長所アセスメントを役立てられます。この重複部分が、勤務時間の出来るだけ多くを使うべき特別なソーンなのです。何故なら、そここそが最大の成果をあげられる分野であり、もっとも幸せを感じながら仕事の出来る分野だからです。

当院では、
睡眠障害(不眠症)、不安症、うつ病、躁うつ病、適応障害、
強迫症、摂食障害、月経前症候群(PMS)、統合失調症、
過敏性腸症候群、自律神経失調症、心身症、パニック症など、
皆様の抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
当院では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。
ご自身の能力の凸凹の可能性が気になられる患者様、とりわけ発達障害(ADHDやASD)の可能性を危惧されている患者様は、御診察の際に、その旨を当院医師にお申し出頂けましたら幸いです。
監修者:
新宿ペリカンこころクリニック
院長 佐々木 裕人
資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医
所属学会:日本精神神経学会
参考引用文献:『すごいADHD特性の使い方』『ADHD2.0 特性をパワーに変える科学的な方法』


