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発達障害について(各論) 1.自閉症スペクトラム障害 (ASD) 前半

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発達障害について(各論) 1.自閉症スペクトラム障害 (ASD) 前半

自閉症スペクトラム障害 (Autism Spectrum Disorder: ASD)

100人に1人ともいわれ、現在日本の人口が約1億2000万人ですから、約120万人程度いる計算になります。 この数字から、実はそんなにまれで特別な障害ではないことがわかります。 自閉症スペクトラム障害は3つの特徴からなります。 ①社会性(対人関係)の障害 ②コミュニケーションの障害 ③行動や興味のこだわり(想像力の障害) (DSM-Ⅴでは①と②をまとめています。内容自体はかわりません。)

【3つの特徴:①社会性障害】

想像しやすいように具体例を挙げてみます。 ・眼を見て話さない、目線が合わない(目線を合わさないまま会話する) ・相手の立場を考えた言動をしない(TPOに合った言葉や敬語の選び方をしない) ・共感性が乏しい(自分の世界に閉じこもる、周囲に関心がない) ・思い込みが激しい(自分の考えが全て) ・深い交際ができない(常に距離をとる) ・身体的な距離感がわからない(相手のパーソナルスペースに入ってしまう) 解説: 自閉症スペクトラム障害に最も多くみられる特徴です。 我々が社会の中で生きていくには、相手の気持ちを想像して、場の雰囲気にふさわしい言動をすることで、良い人間関係を構築していくことが大切です。 この能力を社会性と言います。 ところが、自閉症スペクトラム障害の人は、相手の気持ちを想像したり、TPO、雰囲気を読み取ることが苦手で、自分の思った通りに行動してしまいます。 ご両親に幼少期のイメージをたずねると、「視線を合わなかった」「抱っこをせがまなかった」「一人が好きだった」「手のかからない子供だった」というお話が多いです。 これは、特に親との間に形成される愛着感情が十分に育たないためと考えられています。 通常は、成長するにつれて、社会性を帯び、友人を作ることができますが、そもそも友人を作ろうという気持ちが薄いため、友人がほとんどいません。 マナーやルールを身につけるのも苦手です。 これも通常は成長する中で自然に学習していきますが、なかなかその意味が理解できず、習得できません。 マナーやルールは、自分を抑えて周囲に合わせることですが、社会性に乏しいとそれが苦痛に感じます。 身体的な距離感がつかめず、不必要に近づいたりすることで、相手に不快感を与えてしまったり、あるいは逆に好意があるのかと勘違いされることもあります。 いずれも、本人が意図的に行っているものではなく、その特性から本人としては自然にふるまっているだけなのです。 大人の方ですと、逆に必要以上に気をつかっている人もいます。 なぜなら、幼少期に両親や周囲の大人から毎日のように「お前は(あなたは)人の気持ちがわからない」と言われ続けてきた結果、自己評価が下がってしまい、常に相手に迷惑をかけないように、嫌われないようにと行動しているためです。 例えば、ほんの1分でも約束の時間に遅れただけで、何時間も遅れたかのようにひたすら謝ったりします。 また親しい間柄の人にも、必要以上の敬語で話し、相手との関係性の認識にギャップが生じたり、ビジネス上では慇懃無礼という評価になってしまったりします。 大人の方で、本人のこういった特性を理解してくれる職場にうまく巡り会えると、長く勤務することができますが、人によっては職を転々としてしまう方もいます。

【3つの特徴:②コミュニケーションの障害】

・ 曖昧な表現が理解できない ・言葉を字義通り捉える ・自分から話そうとしない ・負の感情の表現方法がわからず、不快感がたまりパニックになる ・自分にしかわからない言葉を使う いわゆる、会話が噛み合わないタイプです。 共感したり、意思疎通を図ることが困難なため、対人関係を構築するのが苦手です。 言葉を理解することも表現することも、苦手です。 伝達手段としての言葉の使い方が理解できないので、相手が何を伝えたいか、あるいは自分の考えをどう相手に伝えたらいいのか、わかりません。 そのため、人によっては、「かえって話さない方がよい」と思うようになり、ほとんど自ら言葉を発することをしなくなります。 また、言葉の使い方が不自然な場合もあります。 コミュニケーションが一方的になり、相手が聞いてなさそうにも関わらず、延々と自分だけ喋る人もいます。 相手が自分の話していることに興味がないことが、表情や態度から読み取ることができません。 話し方も独特で、自然な起伏がなく、フラットに話し続けたり、無表情で身振り手振りもないので、相手からは不自然でとっつきにくい印象になってしまいます。 気持ちに裏表がないため、相手の心を不用意に傷つけたりすることもあります。 未婚の人になぜ結婚しないのとたずねたり、肥満タイプの人に太っているねとはっきり言ったりしてしまいます。 誰かが間違っていると思った場合は、相手が目上の人であっても、正面から間違いを指摘してしまいます。

【3つの特徴:③行動や興味のこだわり(想像力の障害)】

具体例です。 ・同じ行動を繰り返す ・体を前後左右にゆすったり、手を何度も洗う(一見、強迫性障害に似ている) ・ 興味の対象が限定的で、好きなことには没頭するが、仕事や家庭を犠牲にしてしまう ・規律や秩序のある環境だと安心して行動できる、自由な環境だと居心地が悪い ・本や雑誌を飛ばし読みできず、1ページ目から順に読む ・臨機応変な対応ができず、気が利かない、融通が利かないと思われる ・決まった道しか通らない、決まった場所で決まったものを食べるなど、行動パターンがいつも同じ、変化を嫌がる ・物事を毎日手順通りすることにこだわる、効率は考慮しない 特定の事柄に強くこだわり、変化を嫌い、限定、反復的な行動をとります。 スケジュールも朝から床に就くまで全部あらかじめ決めています。 仕事も一定の手順でやることにこだわります。 変更を指示されると、混乱してパニックになります。 変更した場合の流れを読み、どう行動すればいいのかわからないからです。 柔軟性に乏しいと表現できます。 パニックになり、なんとかつらさから逃れるために自傷行為をする人もいます。 この特性は社会で生きるときに、プラスになることがあります。 自分の興味のある分野に対しては、並外れた集中力を発揮します。 「気持ち」を持っている人との関わり方は苦手でも、機械などは「気持ち」を盛っていないので、扱いやすいのです。 画家や音楽家などのアーティストや、数学者などに自閉症スペクトラム障害の傾向が強い人が多いことがわかっています。

【自閉症スペクトラム障害に併存する障害、疾患】

自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害は、各々が程度の強弱がありながらオーバーラップすることが知られています。 自閉症スペクトラム障害と注意欠如・多動性障害の両方を持っている方も、多くいらっしゃいます。 自閉症スペクトラム障害と注意欠如・多動性障害が併存している場合は、診断上は自閉症スペクトラム障害を優先することとなっています。 なお、明らかな知的障害がある場合は、知的障害がさらに優先されます。 自閉症スペクトラム障害と注意欠如・多動性障害を両方持っている人は、やはりそれだけ余計に生きづらさを感じやすいです。 また、自閉症スペクトラム障害は、てんかんやとレット症候群を併発しやすいと言われています。 てんかんは自閉症スペクトラム障害の人の1/5にみられ、青年期に発症しやすいといわれています。 てんかんは、手足や全身にけいれん発作を起こす、脳の疾患です(外観上、けいれん発作がタイプもあります)。 トゥレット症候群は、チックが重症化したものです。 チックは、激しいまばたきや首をピクピク動かしたりする運動チックと、咳払いをしたり鼻を鳴らしたりする音声チックがありますが、その両方ともあるのがトゥレット症候群です。 また、これも発達障害全般に言われることですが、感覚異常と運動障害も併発しやすいです。 感覚過敏とは、音やにおい、光などを過剰に受け取ってしまうことをいいます。 私たちは、パーティーなどで大人数が同時にしゃべっている環境でも、自分が話している特定の相手のみを聞くことができます。 これを、選択的注意と言います。 しかし、自閉症スペクトラム障害の人は、この選択的注意が苦手です。 周囲の会話まで聞き取ってしまいます。 そのため、肝心の会話の相手の話が、なかなか頭に入ってきません。 そのため、相手からは「話を聞いてくれていない」と勘違いされることもあります。 光はまぶしく感じる傾向が強く、見たいものとその背景を区別するのが苦手です。 鼻がよく効くと、いろんな匂いが混じりやすい、人混みのなかが苦手です。 肌の感覚も敏感なので、自分が許容できる服の素材が限られていたり、触られただけでも叩かれたように感じてしまいます。 味覚に関しては、偏食がしばしばみられます。 また、逆に、暑い、寒い、痛いなどを感じにくいタイプの方もいます。 運動も、自分に正確な情報のインプットがされないので、全般的に苦手になります。

【自閉症スペクトラム障害の歴史】

なぜ「歴史」が必要なのかと思われる方も多いでしょうが、発達障害の分野は色々な名称があったりしてわかりにくいことが多いのですが、少し歴史を勉強することでわかりやすくなると思います。 自閉症という用語を初めて使用したのは、アメリカの精神科医レオ・カナーでした。 彼が1943年に発表した論文の中で、用いています。 彼は、言語発達能力や社会性に重度の障害が認められる幼児たちがいるのを発見し、「早期幼児自閉症」という用語で発表しました。 彼らの多くは知的障害もあったため、自閉症と知的障害を合併していると考えました。 1年後の1944年に、ハンス・アスペルガーというオーストリアの小児科医が、「自閉的精神病質」という論文を発表しました。 彼が報告した子供たちとカナーが発表した子供たちの違いは、知的障害や言語発達の遅れが伴うかどうかでした。 アスペルガーが報告した子供たちは、両方とも認められなかったのです。 また、最初にカナーが発表してからしばらくは、社会的な価値観もあいまって、養育環境が原因と考えられていました。 しかし、1968年にラターらが言語認知障害仮説を提唱し、認知心理学的研究が盛んになりました。 DSMに初めて登場したのは、1980年に発表されたDSM-Ⅲでした。 そのときの名称が、広汎性発達障害です。 そして1981年に、イギリスの児童精神科医であるローナ・ウイングが、カナーとアスペルガーの報告した疾患は同一のものであると発表しました。 これで、ようやくアスペルガーの論文は日の目を見たのでした。 1994年に発表されたDSM-Ⅳには、アスペルガー障害が記載されています。 これによって、それまであまり知られていなかった知的能力や言語発達に遅れがないタイプも含まれるようになりました。 ウイングは、カナーやアスペルガーの発表した概念をさらに拡げ、自閉症スペクトラムという概念、用語を提唱しました。 これは、知的障害や言語発達能力で区別せず、自閉症とアスペルガー症候群、さらにその周辺の自閉性障害を全て網羅するものでした。 スペクトラム(Spectrum)とは「連続体」という意味があります。 例としては、虹で説明されることが多いです。 虹は7つの色が連なって構成されていますが、各々が明瞭に分かれているわけではなく、境界がなく一つながりに見えます。 自閉症も虹と同じように、ある/なしの二元論敵ではなく、一つながりの、シームレスなものである、ということです。 ウイングは自閉症スペクトラムの特徴として、 1.社会性の障害 2.コミュニケーションの障害 3.想像力の障害 をあげており、これを3つ組の障害と言います。 これが、現代の自閉症スペクトラム障害の3つの特徴の原型というわけです。 さらに2013年に改訂されたDSM-Ⅴでは、広汎性発達障害は自閉症スペクトラム障害(自閉スペクトラム症)と改名されました。 また、従来は記載されていた、自閉性障害、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害などは廃止されました。 研究が進む中で、ウイングが提唱した3つ組の障害のうちの想像力の障害は、より正確な表現として行動や興味のこだわりと変更され、現在は必須項目となっています。

診断基準①:ICD-10

ICD-10では、広汎性発達障害という名称になっていますが、指しているものは変わりません。

【F84 広汎性発達障害 Pervasive developmental disorders】

相互的な社会関係とコミュニケーションのパターンにおける質的障害、および限局した常同的で反復的な関心と活動の幅によって特徴づけられる一群の障害。 程度の差はあるが、これらの質的な異常は、あらゆる状況においてその患者個人の機能に広汎にみられる特徴である。 多くの場合、幼児期から発達は異常であり、ほんのわずかな例外を除いて、この状態は生後5年以内に明らかとなる。 常にではないが通常は、ある程度の全般的認知機能障害がある。 しかしこの障害は個人の精神年齢(遅滞のあるなしにかかわらず)に比較して偏った行動によって定義される。 広汎性発達障害の群全体の下位分類については、多少の見解の不一致がある。 一部の症例では障害は、いくつかの医学的な病態に伴っているか、あるいは原因となっているようで、そのうちでは乳 幼児けいれん、胎児性風疹、結節性硬化症、 脳リピドーシス、脆弱 X 染色体異常が最もふつうである。 しかしながら、この障害は合併する医学的な病態のあるなしにかかわらず、行動的特徴に基づいて診断すべきである。 しかし、この病態は別にコード化しなければならない。 もし精神遅滞が存在するなら、それは広汎性発達障害に普遍的な特徴ではないので、別に F70ーF79にもコードすることが重要である。 参考のため、小児用の説明も載せておきます。興味のある方はご参照ください。

【F84.0 小児自閉症 Childhood autism】

3歳以前に現れる発達の異常および/または障害の存在、そして相互的社会的関係、コミュニケーション、限定した反復的な行動の3つの領域すべてにみられる機能異常の特徴型によって定義される広汎性発達障害。 この障害は、女児に比べ男児に3倍ないし4倍多く出現する。 診断ガイドライン: 通常、先行する明確な正常発達の時期は存在しないが、もし存在しても、それは3歳以下までである。 相互的な社会関係の質的な障害が常に存在する。 これらは、他者の情緒表出に対する反応の欠如、および/または社会的文脈に応じた行動の調節の欠如によって示されるような、社会的ー情緒的な手がかりの察知の不適切さ、社会的信号の使用の拙劣さと、社会的、情緒的、およびコミュニケーション行動の統合の弱さ、そしてとくに社会的ー情緒的な相互性の欠如という形をとる。 同様に、コミュニケーションにおける質的な障害も普遍的である。 これらはどのような言語力があっても、それの社会的使用の欠如、ごっこ遊びや社会的模倣遊びの障害、言葉のやりとりの際の同調性の乏しさや相互性の欠如、言語表現の際の不十分な柔軟性や思考過程において創造性や想像力にかなり欠けること、他人からの言語的および非言語的な働きかけに対する情緒的な反応の欠如、コミュニケーションの調節を反映する声の抑揚や強調の変化の使用の障害、および話し言葉でのコミュニケーションに際して、強調したり意味を補うための身振りの同様な欠如、という形をとる。 またこの状態は、狭小で反復性の常同的な行動、関心、活動によって特徴づけられる。これらは日常機能の広い範囲にわたって、柔軟性のない型どおりなことを押しつける傾向を示す。 通常、これは、馴染んだ習慣や遊びのパターンにとどまらず、新しい活動にも当てはまる。 とくに幼児期には、ふつうでない物体、典型的な場合は柔らかくない物体に対する特別な執着がみられることがある。 小児は、無意味な儀式によって、特殊な決まりきったやりかたに固執することがある。 これらは日時、道順あるいは、時刻表などへの関心に関連した、常同的な没頭であることがあり、しばしば常同運動がみられる。 物の本質でない要素(たとえばそのにおいや感触)に特別な関心を持つこともよくある。 個人の環境において、いつも決まっていることやその細部の変更(たとえば、家庭において飾りや家具を動かすことなど)に抵抗することがある。 これらの特異的な診断特徴に加えて、自閉症の小児が、恐れ/恐怖症、睡眠と摂食の障害、かんしゃく発作や攻撃性など一連の非特異的な問題を呈することがしばしばある。 (手首を咬むなどの)自傷はかなり一般的であり、とくに重度の精神遅滞が合併している場合にそうである。 自閉症を持った多くの人が、余暇を過ごす際、自発性、積極性、創造性を欠き、(課題自体は十分能力の範囲内のものでも)作業時に概念を操作して作業することが困難である。 自閉症に特徴的な欠陥の特異的な徴候は成長するにしたがい変化するが、これらの欠陥は、社会性、コミュニケーション、興味の問題というパターンがほぼ同様のままで成人に達しても持続する。 診断がなされるためには、発達の異常は生後3年以内に存在していなければならないが、この症候群はすべての年齢群で診断しうる。 自閉症にはすべての水準のIQが随伴するが、約4分の3の症例では、著しい精神遅延が認められる。 (含)自閉性障害、幼児自閉症 infantile autism、小児精神病、カナー症候群 鑑別診断: 広汎性発達障害の他の項は別にして、以下のものを考慮することが重要である:
  • 二次的な社会的ー情緒的諸問題を伴った受容性言語障害の特異的発達障害
  • 反復性愛着障害
  • あるいは脱抑制性愛着障害
  • 何らかの情緒/行為障害を伴った精神遅滞
  • 通常より早期発症の統合失調症
  • レット症候群
  【F84.0 小児自閉症 Childhood autism 研究用診断基準】 A. 3歳以前に、次にあげる領域のうち少なくとも1つに発達の異常、もしくは発達の退行が明らかに存在すること。 (1) 社会的なコミュニケーションに用いる受容性言語または表出性言語。 (2) 相手に対する選択的な愛着の発達、または社会的相互交渉の発達。 (3) 機能あそびまたは象徴あそび。 B.(1)、(2)、(3)から併せて、少なくとも6つの症状が存在し、なおかつ(1)から少なくとも2つ、(2)、(3)からそれぞれ少なくとも1つが存在すること。 (1) 社会的相互交渉における質的な異常として、次にあげる領域のうち少なくとも2つ以上が存在すること。 (a)視線・表情・姿勢・身振りなどを適切に使用して、相手とのやりとりを調整することができない。 (b) (機会は豊富にあるにもかかわらず、精神年齢に見合ったやり方で)興味・活動・情緒を相互に分かち合うような友達関係を、十分に発展させることができない。 (c)相手の感情に対する反応が乏しかったり異常だったりすることで示される社会-情緒的相互関係の欠如、あるいは社会的文脈にそって行動を調整することの欠 如、あるいは社会的、情緒的、意思伝達的な行動を統合する力の弱さ。 (d) 喜び、興味、達成感を相手と自発的に分かち合おうとしない(たとえば自分が 関心をもっている物を相手に見せたり、もってきたり、あるいは指し示すことがないこと)。 (2) コミュニケーションにおける質的な異常として、次にあげる領域のうち少なくとも1つが存在すること。 (a)話し言葉の発達が遅れているか、あるいは話し言葉が全くない、なおかつそれに代わるコミュニケーション様式として身振りや手振りを用いようとしない(これに先立ち、意思伝達をする喃語がなかったということが多い)。 (b) (言語能力がどのような水準にあろうとも)相手からのコミュニケーションに 対して互いに反応しあうものである会話のやりとりを、自分から始めたり維持することが、その言語能力に見合わないほど下手である。 (c)常同的・反復的に言語を使ったり、あるいは単語や語句の特有な言い回しをする。 (d) ごっこあそびや(低学年であれば)相手との模倣あそびを、いろいろなやり方で、自発的に行うことがない。 (3) 行動や興味および活動の制限された反復的・常同的パターンとして、次にあげる領域のうち少なくとも1つが存在すること。 (a)1つまたはそれ以上の、常同的で制限された興味のパターンへの没頭が見られ、なおかつその内容や焦点の当て方で異常であること。または1つあるいはそれ以上の興味への没頭が見られ、内容や焦点の当て方ではなく、その強さや限定され た性質の点で異常である。 (b) 特定の機能的でない手順や儀式的行為に対して、強迫的とも見える執着のしかたを示す。 (c)手や指をひらひらさせたりくねらせたり、全身を複雑に動かしたりするなどの、常同的で反復的な運動上の奇妙な癖がある。 (d) 遊具の一部分や機能と関わりのない要素(たとえば、その匂い・表面の感触・それから生じる音や振動)に没頭する。 C。その臨床像は、小児自閉症以外の広範の発達障害なお、有名なアスペルガー障害(症候群)も、ICD-10ではこの広汎性発達障害に含まれていますが、これはまた別ページでご説明します。

診断基準②:DSM-Ⅳ,Ⅴ

一方、DSM‐Ⅳでは、「自閉性障害」となっており、DSM-Ⅴから「自閉症スペクトラム障害」という名称が用いられています。 まずはDSM-Ⅳの診断基準が見ていきます。

【299.00 自閉性障害 DSM-Ⅳ】

A.(1)・(2)・(3)から合計6つ(またはそれ以上)、うち少なくとも(1)から2つ、(2)と(3)から1つずつの項目を含む (1)対人的相互反応における質的な障害で、以下の少なくとも2つによって明らかになる。 (a)目と目で見つめ合う・顔の表情、体の姿勢、身振りなど、対人的相互反応を調節する多彩な非言語的行動の使用の著明な障害 (b)発達の水準に相応した仲間関係を作ることの失敗 (c)楽しみ・興味・達成感を他人と分力、ち合うことを自発的に求めることの欠如(例:興味のある物を見せる、持って来る、指差すことの欠如) (d)対人的または情緒的相互性の欠如 (2)以下のうち少なくとも1つによって示されるコミュニケーションの質的な障害: (a)話し言葉の発達の遅れまたは完全な欠如(身振りや物まねのような代わりのコミュニケーションの仕方により補おうという努力を伴わない) (b)十分会話のある者では、他人と会話を開始し継続する能力の著明な障害 (c)常同的で反復的な言語の使用または独特な言語 (d)発達水準に相応した、変化に富んだ自発的なごっこ遊びや社会性をもった物まね遊びの欠如 (3)行動、興味、および活動の限定された反復的で常同的な様式で、以下の少なくとも1つによって明らかになる. (a)強度または対象において異常なほど、常同的で限定された型の1つまたはいくつかの興味だけに熱中すること (b)特定の機能的でない習慣や儀式にかたくなにこだわるのが明らかである (c)常同的で反復的な衒奇的運動(例:手や指をばたばたさせたりねじ曲げる、または複雑な全身の動き) (d)物体の一部に持続的に熱中する B.3歳以前に始まる・以下の領域の少なくとも1つにおける機能の遅れまたは異常: (1)対人的相互反応 (2)対人的コミュニケーションに用いられる言語、または (3)象徴的または想像的遊び C.この障害はレット障害または小児期崩壊性障害ではうまく説明されない 改訂されたDSM-Ⅴでは、名称も疾患概念も変更されています。

【DSM-5 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害】

≪診断基準≫ A. 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人相互反応における持続的な欠陥があり、現時点または病歴によって、以下により明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)。 (1)相互の対人的-情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方や通常の会話のやりとりのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ。 (2)対人的相互反応で非言語的コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、まとまりのわるい言語的、非言語的コミュニケーションから、視線を合わせることと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。 (3)人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、さまざまな社会的状況に合った行動を調整することの困難さから、想像上の遊びを他者と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ。 B. 行動、興味、または活動の限定された反復的な様式で、現在または病歴によって、以下の少なくとも2つにより明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)。 (1)常同的または反復的な身体の運動、物の使用、または会話(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同運動、反響言語、独特な言い回し)。 (2)同一性への固執、習慣への頑ななこだわり、または言語的、非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣、毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求) (3)強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭、過度に限局したまたは固執した興味) (4)感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音または触感に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する) C. 症状は発達早期に存在していなければならない(しかし社会的要求が能力の限界を超えるまでは症状は完全に明らかにならないかもしれないし、その後の生活で学んだ対応の仕方によって隠されている場合もある) D. その症状は、社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしている E.これらの障害は、知的能力障害(知的発達症)または全般的発達遅延ではうまく説明されない。知的能力障害と自閉スペクトラム症はしばしば同時に起こり、自閉スペクトラム症と知的能力障害の併存の診断を下すためには、社会的コミュニケーションが全般的な発達の水準から期待されるものより下回っていなければならない。 注:DSM-IVで自閉性障害、アスペルガー障害、または特定不能の広汎性発達障害の診断が十分確定しているものには、自閉スペクトラム症の診断が下される。社会的コミュニケーションの著しい欠陥を認めるが、それ以外は自閉スペクトラム症の診断基準を満たさないものは、社会的(語用論的)コミュニケーション症として評価されるべきである。 自閉症スペクトラム症の重症度水準重症度水準 社会的コミュニケーション 限局された反復的な行動
レベル3 非常に十分な支援を要する 言語的および非言語的社会的コミュニケーションの技能の重篤な欠陥が、重篤な機能障害、対人的相互反応の開始の非常な制限、および他者からの対人的申し出に対する最小限の反応などを引き起こしている。例えば、意味をなす会話の言葉がわずかしかなくて相互反応をほとんど起こさなかったり、相互反応を起こす場合でも、必要があるときのみに異常な近づき方をしたり、非常に直接的な近づき方のみに反応したりするような人行動の柔軟性のなさ、変化に対処することへの極度の困難さ、またはあらゆる分野において機能することを著しく妨げるような他の限局された反復的な行動。焦点または活動を変えることへの強い苦痛や困難さ
レベル2 十分な支援を要する 言語的および非言語的コミュニケーション技能の著しい欠陥で、支援がなされている場面でも社会的機能障害が明らかであったり、対人的相互反応を開始することが制限されていたり、他者からの対人的申し出に対する反応が少ないか異常であったりする。例えば、短文しか話さず、相互反応が狭い特定の興味に限られ、著しく奇妙な非言語的コミュニケーションを行うような人行動の柔軟性のなさ、変化に対処することへの極度の困難さ、またはあらゆる分野において機能することを著しく妨げるような他の限局された反復的な行動。 事情を知らない人にも明らかなほど高頻度に認められ、さまざまな状況で機能することを妨げている。焦点または活動を変えることへの苦痛や困難さ
レベル1 支援を要する 適切な支援がないと、社会的コミュニケーションの欠陥が目立った機能障害を引き起こす。 対人的相互反応を起こすことが困難であるし、他者からの対人的申し出に対して非定型のまたはうまくいかない反応をするような事例がいくつもはっきりとある。 対人的相互反応への興味が低下しているように見えることもある。 例えば、完全な文章で話しコミュニケーションに参加することができるのに、他者との会話のやりとりに失敗したり、友人を作ろうとする試みが奇妙でたいていうまくいかないような人 行動の柔軟性のなさが、1つ以上の状況で機能することに著しい妨げとなっている。 いろいろな活動相互で切り替えをすることの困難さ。組織化や計画の立案をすることでの問題(自立を妨げている)