お父さん(夫)にASDの特性がある場合
本人に悪気がなくても、特性による独特のコミュニケーションとこだわりの強さによって、お母さん(妻)は恒常的なストレスにさらされる場合があります。
Ⅰ.「暗黙の了解」や「あうんの呼吸」が理解できない
社会生活を円滑に送るためには、社会の常識やルールに従う必要があります。そしてそれは社会だけでなく、もっと小さな枠組みである“家庭”にもあります。家族構成やそれぞれの年齢、ライフスタイルなどによって築かれた家族のルールに従って、それぞれが自分の役割を果たすことによって成り立っています。
しかし、ASD(自閉スペクトラム症)の特性があるお父さん(夫)の場合、そもそも目に見えない常識やルール、「暗黙の了解」や「阿吽の呼吸」といったものを理解することが難しく、日常生活の様々な場面で意見の食い違いが起こる可能性があります。
Ⅱ.「マイルール」を家族に押しつける場合も
ASDの人には、こだわりが強いという特性もあります。これは自分だけのルールにこだわる行動として表れる場合があります。例えば、特性のあるお父さんが「6時に起床」というマイルールを設けていて、平日・休日に関わらず毎朝6時に起きているとします。自分が守る分には問題ありませんが、「仕事や学校が休みの日は、もう少しゆっくり寝ていたい」と思っている他の家族にも、「全員が6時に起床すべき」を押しつけてくる場合があります。
こうしたことが生活全般に及ぶと、家族には恒常的にストレスが掛かり、家族関係をギクシャクさせる原因になります。
Ⅲ.家族への関心が薄いケースもある
家族内を自分の思い通りにしたいというタイプがいる一方で、家族に無関心というケースもあります。社会性に乏しいため、他人に対して余り関心が持てない傾向があり、家族も例外ではありません。
例えば、夫婦共働きで子どものいる家庭で、母親が家事や子どもの世話で慌ただしく動いていても、ASDの特性のあるお父さんには「サポートする」という発想はなく、知らんぷりをしているようなことがあります。
これは「家事は女性がするもの」と思っているからというよりも、単に家族の行動に関心が向かず、自分の時間を優先しているだけだったりします。そのため、子どもが「宿題を見て」と頼んできても、それに応じずに一人部屋にこもってしまうこともあります。
Ⅳ.言葉で伝えないと理解してもらえない
ASDの人は目に見えないことを理解するのが苦手なため、はっきりと言葉で伝えないと分かってもらえない場面が沢山あります。例えば、お母さん(妻)が風邪で寝込んでしまった時、普通なら何も言わなくても、お父さん(夫)が代わりに夕食を作ったり、子どもの世話をしてくれるだろうと考えます。さらには具合の悪い自分の体調を気遣ってくれたら嬉しいとも期待するでしょう。
ところが、お父さんに特性があると、寝込んでいるお母さん(妻)に対して「ごはんまだ?」などと言ったり、自分の分だけ出来合いのお弁当を買ってきて食べたりすることがあります。悪気はないのですが、その状況で「自分は何をしたらいいのか」「家族は何をして欲しいと思っているのか」に思い至ることができないのです。この場合、「風邪でご飯の用意が出来ないから、代わりにお弁当を〇個買って来て」と言葉で伝えなければ、理解してもらえません。

お父さん(夫)にADHDの特性がある場合
ADHDの特性は大人になっても基本的に変わらないため、生活の様々な場面でミスやトラブルが起こり、家族は振り回されてしまいがちです。
Ⅰ.物事に優先順位がつけられない
ADHDの人は、「多動性」の特性から、物事に優先順位をつけることが苦手です。これは仕事の場面においても様々なトラブルの原因となりますが、家族においても同様です。
例えば、家族旅行を計画したとしましょう。それに向けて、宿の手配や持ち物の用意、旅工程など、準備することが色々あります。しかし、手順を考えることが苦手なので、取り掛かりが遅く、段取りも悪く、結局予定通りに出発出来なかったり、忘れ物をして予定を変更することになったり…等々といったことが頻繁に起こります。
また、思いつきであれこれ予定を詰め込んでしまい、半分もこなせないまま帰ってくる羽目になるという場合もあります。
Ⅱ.整理整頓が出来ない
ADHDの人によく見られる傾向として、男女を問わず片づけが苦手ということがあります。この特性はお母さん(妻)からすれば頭痛の種です。脱いだ服は脱ぎっぱなし、出したものは出しっぱなしにするので、家の中がスッキリ片付きません。
本人も片付けようとは思っているのですが、目の前にあることや頭に浮かんだことに気を取られて、今やるべきことを忘れてしまうのです。一つのことに集中して取り組むことも苦手なので、片づけるものや範囲が大きくなればなるほど、最後までやり切ることが難しく、増々散らかっていきます。
これをリビングなど、家族の共有スペースでされてしまと、子どもの生活習慣にも悪影響を及ぼす可能性が出てきます。
Ⅲ.金銭の管理が苦手
ADHDの人は、不注意や衝動性の特性から、計画的に行動したり、物事を管理するといったことが苦手です。この傾向はお金の管理にも現れます。
衝動性から感情のコントロールが上手くできないところがあり、ショッピングに行くと目に入るものが欲しくなって、必要でもないのに買ってしまったりします。それが高額なものであっても、歯止めが効きません。また、買ったことを忘れて、また同じ物を買ってしまうこともあります。
持ち合わせがなくても、クレジットカードがあるとついつい買い過ぎて支払い限度額を超えてしまったり、借金の返済が追い付かずに多額のローンを抱えてしまう場合もあります。また、公共料金や税金の支払い期日を忘れて、滞納してしまうことも少なくありません。不注意の特性から、契約書などをよく読まずにサインしてしまい、後でトラブルを招いてしまう可能性も高いと言えます。

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当院では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。
監修者:
新宿ペリカンこころクリニック
院長 佐々木 裕人
資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医
所属学会:日本精神神経学会
参考引用文献:宮尾 益知著『お父さんが発達障害とわかったら読む本』


