「春眠暁を覚えず」~春はなぜ眠いのですか?
私たちが常に体温を約36℃に維持するためには、実は大量のエネルギーを必要とします。日照時間が短くて寒い「冬」は特に体温維持に多くのエネルギーを使いますので、それ以外の活動は全体的に”省エネモード”に入ります。
基本的に、私たちは体力や気力が少ない時(不足している時)には、それを回復するために睡眠が増えます。他にも、満腹になると眠くなる方や、甘い物の摂取が増える方もいらっしゃいます。
そして、春になって、日照時間が延びてくると、活動しやすい環境となり、身体は”活動モード”に切り替わります。そのために、睡眠時間も減っていくのが通常なのですが、冬の身体の消耗が残っている(持ち越されてしまう)と、身体が”省エネモード”の状態のまま春を迎えてしまい、「朝起きられない」「日中も眠い」等々の症状が現れるのです。
春は「三寒四温」の言葉通り、日よって寒暖差が生じやすく、自律神経が乱れやすいのも、その症状に拍車を掛けていると言ってもよいでしょう。
冬から春の変化についていくためには、以下の事柄の実践が効果的です。
★質の良い睡眠をとるように心掛けること。
★朝日をしっかり浴びて、幸せホルモンであるセロトニンを分泌させ、体内時計をリセットさせること。
★消化の良い食事を、腹八分とって、胃の負担を減らすこと。
★漢方の考え方ですと、春は酸っぱい食べ物(酸味)を積極的に摂取することが推奨されています。具体的には、梅干しやレモン、酢の物やヨーグルトなどです。
春は自律神経のバランスが崩れやすい季節?
「春」は環境の変化に伴い自律神経のバランスを崩しがちな季節です。冬から春へと気候が変動し、交感神経が優位な状態から、副交感神経が優位な状態へと変動していきます。そのことにより、体調不良も起こりやすくなり、メンタル面に支障をきたしてしまうことも間々あるため、何かと注意が必要な季節なのです。
自律神経というと、つい日内変化に目が行きがるですが、一年の動きでいうと、季節によってもバランスが大きく変動しています。季節の変わり目は、気温や気圧が大きく変化をするため、自律神経が対応しきれずに、体調を崩したり、風邪を引いたりすることが多く見られます。自律神経のバランスが崩れることで、免疫システムにも差し障りが生じ、ウィルスや細菌などにも感染しれしまいやすくなります。
大づかみに言いますと、気温が上がる夏は副交感神経が優位になりがちで、気温が下がる冬は交感神経が優位になるがちになるのです。
夏に香辛料を使ったものが食べたくなるのは、食欲を増進する作用のみならず、交感神経を高めるのに適した食材だからです。
冬は身体が血管を収縮させ、体温を上げようとするので、交感神経の働きが優位になります。胃に負担のかかる料理よりも、消化に良いものを食べた方が身体の働きに即しています。
季節の変わり目に体調を崩してしまう人が多いのは、自律神経が上手く対応できていないことが要因とも言えます。高いレベルで自律神経のバランスを保ち、体調管理に役立てるようにさてて下さい。

春に起きる「のぼせ・ふらつき」対策とは?
中医学(漢方)においては、春は自律神経がアンバランスになり易い季節とされています。気持ちは急に昂ってくる一方で、身体が中々ついていかないというケースが多々あります。
春は特に「肝(かん)」に負担が掛かり易い季節とされています。何故なら、冬の間に溜め込んだ老廃物を解毒(デトックス)しようと、「肝」がフル稼働することで、疲弊してしまうからです。
そして、「肝」の中に本来は収まっているはずの「血(けつ)」があふれ出し、上半身に停滞しやすくなります。この「血」の停滞が起こると、そこに「熱」が生じ、この「熱」が春特有ののぼせ・ほてり・ふらつき等を引き起こすのです。
特に、余分な熱を冷まして身体を潤す役割を持つ「陰液」が足りない「陰虚証」の方は、こういった症状がより顕著に出易くなります。
「肝」の働き過ぎによる、のぼせやほてりを改善するために必要なことは、まずは体内の熱を冷ます性質のある食べ物で余分な熱を排出し、潤いをしっかりと充填することです。
熱を冷ます性質のある「苦味」の食べ物や、余分な「熱」をクールダウンさせる「陰液」を補う食べ物を意識的に選んでいきましょう。例えば、春の山菜であるフキノトウやタラの芽、コゴミ、タケノコや、熱を冷ます性質のある蓮の葉のお茶や、アサリなどがお勧めです。

春はデトックスの季節!
冬は基礎代謝が上がるため、エネルギー不足にならないよう、私たちの身体は栄養を蓄えようとします。その影響で、毒素や老廃物も溜め込みやすくなります。
春になると、冬に溜めた毒素を分解・排泄しようと、解毒担当の「肝臓」が頑張ります。この時期、飲酒・ストレス・睡眠不足などで肝臓の負担が増えると、不調を招く要因になります。
肩こり(特に右側)、眼精疲労、めまい、血圧不安定、痔、アレルギー性鼻炎、イライラ、不安感、不眠、眠気…などが、その典型的な不調の例です。
春のデトックス(毒出し)をサポートして、身体を春モードに切り替えてくれるのが、旬の「山菜」です。タケノコ、フキ、ワラビ、グリンピース、アスパラガス等がお勧めです。これらには、ポリフェノールやミネラルが多く含まれており、デトックス効果を促進してくれます。『春の皿には苦味を盛れ』という、古来の賢人の知恵をぜひ活かしてみて下さい。

春の気象病
不意に起こる頭痛やめまい、だるさなどの不調は、天気の変化が起こす“気象病”の可能性があります。実はこの気象病は、自律神経の乱れが原因です。そのメカニズムと対策についてご説明をします。
“気象病”ってどんなもの?
気圧や気温、湿度など、気象の変化で起こる心身の不調のことです。梅雨や台風シーズンは、気分の落ち込みも顕著になります。
“気象病”は医学的な病名でではなく、気圧や気温、湿度などの変化によって起こる不調の総称です。特に梅雨や台風の時期は、関節の痛みや気分の落ち込みが出やすい傾向があります。「自分もそうかも?」と思ったら、かかりつけの内科・心療内科、頭痛や慢性痛の専門外来へ。
気象病の具体的な症状とは…?
- 頭痛
- めまい
- 首・肩こり
- 腰痛
- だるさ
- 耳鳴り ……
気象病と自律神経の関係は…?
気象、中でも気圧の変化で交感神経が興奮し、ストレス反応として頭痛やめまいが生じます。
自律神経は特に気圧の変化に敏感です。気圧の変化は内耳にある気圧センサーで感知され脳に伝わりますが、その変化に対応しようと交感神経が過度に興奮して、自律神経のバランスが崩れると、気象病の症状に繋がります。
気圧の変化➡内耳(気圧センサー)が反応➡交感神経が興奮➡頭痛・めまい・だるさ等の不調が起こる
「雨が降ると古傷が痛む」「天気が崩れると片頭痛が起きる」――。こうした天気の変化によって起こる不調は「気象病」と呼ばれ、近年研究が進んできています。その研究によると、「気象病の症状は、天気が下り坂で気圧が下がる時に出やすいですが、逆に天気が回復傾向の時に不調が出る人や、寒暖差に弱い人、湿度の変化に弱い人など様々です。原因不明の不調が度々起こる方は、一度天気との関係を疑った方が良いでしょう」と言われています。また、気象病と「自律神経の乱れ」には深い関係があるそうです。
自律神経は、呼吸や体温、血圧などを調整し、“環境の変化を身体に順応させる”役割を担うため、天気の変化に敏感です。その変化がストレスとなって、時に交感神経に作用し、自律神経のバランスが乱れることで、様々な不調が起こります。
まずは、気象病を自覚することが対策の第一歩です。不調の原因が分かるだけでの不安が軽くなり、自律神経にプラスに作用します。その他、具体的な対策をこれからご紹介していきます。
対策Ⅰ:天気の影響の受けやすさを“知る”だけでもぐっとラクに!
まず、以下のチェックリストに答えてみましょう。
□①雨が降る前や振っている時、頭が痛くなることがある
□➁雨が降る前、眠気やめまいが起こることがある
□③「もうすぐ雨が降りそう」など天気の変化を何となく察知できる
□④天気によって、気分の浮き沈みがある
□⑤春先や梅雨どきなど、季節の変わり目に弱い
□⑥「台風が来る」というニュースに気が滅入る
□⑦普段から肩がこりやすい
□⑧首を痛めたことがある
□⑨過去に大きな怪我や手術をした経験がある
□⑩片頭痛持ちである
□⑪新患性や飛行機に乗ると、耳が痛くなりやすい
□⑫乗り物酔いをしやすい
チェック結果の見方➡①~④のいずれかに当てはまる人は、気象病の可能性が考えられます(当てはまる数が多いほど可能性大です)。①~④に1つもチェックが無い方でも、⑤~⑫で該当する数が多いほど、今後気象病になるリスクが高いと言えます。
対策Ⅱ:気候の変化に身体を慣らしていきましょう!
自律神経の乱れを防ぐためには、季節ごとに身体を慣らす準備が大切です。例えば6月であれば、夏に向けて汗をかき慣れて、体温調整機能を高めることが大切です。少し長めにお風呂に入るなど、意識的に汗をかく習慣をつけていくと良いでしょう。
対策Ⅲ:気圧の変化から内耳を守る
飛行機の離着陸時や新幹線がトンネルに出入りする際などに起こる気圧の変化も、気象病の引き金となります。例えば、新幹線では、気圧変化の少ない中央付近の車両を選ぶと良いでしょう。
また、医師が監修した「天気痛耳せん」(Amazonなどの通販サイトで購入できます)は、気圧の変化による不調の予防や軽減に役立ちます。気象病が出そうな天候の日や、新幹線や飛行機に乗る際などにあると安心です。
対策Ⅳ:ホットタオルで耳を温めてみましょう
ホットタオルを当てて耳を温めると、血流がアップして、内耳の調子が整い、頭痛やめまいも改善します。タオルは、耳の後ろの骨の突起(乳様突起)の下にあるへこみに位置するツボ(完骨)まで覆うように当てるとより効果がアップします。
対策Ⅴ:しつこい頭痛にはタオル体操!
タオル体操で首や肩の筋肉をほぐすと、耳まわりや脳への血流がスムーズになり、内耳や自律神経の働きが安定します。お風呂あがりに髪をふくついでなどに行うと良いでしょう。特に頭痛が酷い方にお勧めです。
①タオルを首にかけて両端を持ち、斜め45度の角度までゆっくり引き上げます。
↓
➁首の位置は維持したまま、10回頷きます。3セットを目安に行いましょう。

当院では、自律神経失調症をはじめ、
うつ病、躁うつ病、不安障害、適応障害、
パニック症、睡眠障害(不眠症)、摂食障害(過食症)
月経前症候群(PMS)、統合失調症、強迫性障害、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
過敏性腸症候群、更年期障害、心身症など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
なお、自律神経失調症の漢方薬による治療をご希望の患者様は、診察時に医師の方にぜひご相談下さい。当院のような心療内科では、健康保険適用で処方することも可能です。
監修者:
新宿ペリカンこころクリニック
院長 佐々木 裕人
資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医
所属学会:日本精神神経学会
参考引用文献:
『ハルメク(2024年7月号)』・小林弘幸著『自律神経にいいこと超大全』


