拒絶過敏症(rejection-sensitive dysphoria:以下RSD)という特性が近年話題になってきています(RSDは医学的な病名ではなく、正式な診断でもありません)。これは人生において重要な他者から拒絶されたり、馬鹿にされたり、批判されていると知覚した時や、想像した時に、感情面で極度の苦痛が引き起こされるというものです。RSDは、例えば自分が設定した高い水準や、他の人の期待に応えられない等、何かを達成できなかった感覚によっても引き起こされます。この「批判や拒否に対して非常に繊細である」という特性は、ウィリアム・ドットソン博士(ADHDに著名な臨床医)の提唱した概念であり、これはADHDを持つ人の一部にみられる傾向だとされています。馬鹿にされる、けなされる、何となく否定されるといったことをほんの僅かでも感じ取ると、急に過剰な反応を示してしまう、というものです。またたく間に落ち込んで、慰めようのない状態に陥ってしまうのです。
そしてその一方で、対になる真逆のADHDの症状として、このRSDとは逆の状態を表す用語も出現しています。それは、評価敏感高揚感(Recognition-sensitive euphoria:以下RSE)というもので、称賛、肯定、励ましを前向きにとらえる突出した能力のことを指します。つまり、ADHDの人は、些細な批判で奈落の底に突き落とされることもあるが、ほんの少しの励ましや評価があれば、高揚して、元気になることもできるのです。

さて、「拒否に敏感」というのは、ADHDの特性の一部でもあります。ADHDの人は、普通の人生に起こる「些細なこと」にこだわって、その影響力を増幅させる傾向があります。RSDの人もそうですが、ADHDの人というのは過度に用心深くなることもよくあるので、そのような影響の及ぶ感情のことを、どんな犠牲を払ってでもなくそうとします。その結果、他の人の意図を読み違えることになってしまったり、予期される事態を避けようと引きこもったりすることになるのです。また、RSDを抱えていると、攻撃性を爆発させたり、短気になって癇癪を起したりするようになる場合もありますが、それは想像上の様々な脅威に対抗しようとしているからです。
RSDについての調査も開始されつつあり、前出のウィリアム・ドットソン博士によると、このような感情の状態に名前が付いていることを知るだけでも、患者の方は安心するのだと言います。自分は独りぼっちではないと知ることが違いをもたらし、名前が付いているから積極的に抑え込めるようになり、絶望に向かう負のスパイラルも食い止めることが出来るようになります。そして、この特性への有効性が示され始めているのが、クロニジンとその姉妹薬であるグアンファシンが挙げられます。なお、グアンファシンは、長時間作用するADHD薬「インチュニブ」という商品名で日本においても使用されています。この2つの薬は、どちらも血圧関係の薬として古くから使われてきました。興奮、攻撃性、感情面での過敏性を鎮めるだけでなく、集中力や注意力を促進する効果が得られるとされています。

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監修者:
新宿ペリカンこころクリニック
院長 佐々木 裕人
資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医
所属学会:日本精神神経学会
参考引用文献:『ADHD2.0 特性をパワーに変える科学的な方法』


