ADHDの方で「話し出したら止まらない」「つい喋り過ぎてしまう…」ということでお悩みの人は少なくないはずです。普通の会話が「キャッチボール」だとすれば、ADHDの方の場合は、投げられた1個のボールを100個にして返しているような感じであり、しかもその100個が一方向ではなく色々な方向に飛んでいくイメージではないかと思われます。時には相手のボールを奪ってでも自分のターンにしてしまうことも間々あるのではないでしょうか。
このようにADHDの人がしゃべり過ぎてしまう理由の一つは、頭の中に次から次へと新しい話題が浮かんでくるからです。「ADHDの人は常に思考がフル回転をしている」と言われていますが、誰かと話している時も、脳がまさにこの状態にあります。例えば、相手から「この前、温泉に行ったんだよね」と言われたとしたら、「私も先週熱海に行った!」「そこで食べたプリンがすごく美味しかったんだよね!」「プリンって言えば、最近渋谷の夜パフェが流行っているらしいよ」「夜パフェってどこ発祥?」……といった具合に、話題が湯水のように湧き出てしまうのです。
もう一つの理由としては、ADHDの人は自分の好きなことへの熱量やエネルギーが非常に高いということにも拠ります。子どもの頃はその傾向が、周囲からは奇異に映ってしまい、浮いてしまうこともあります。ところが一転、大人になってからは、この「喋り過ぎ」は、時として非常に強力な武器にもなるのです。何故なら、好きなことを言語化する能力は、誰にでも備わっている訳ではないからです。よって、この能力は、使いようによっては大きな強みになります。起業を目指す人物に人が集まるのも同じ理屈で、「これが好き」という熱量は、人の心を動かし巻き込む力があるのです。
思考がフルに回転するあまり話題がどんどん変わるのも、アイディアを求められる環境では重宝されます。クリエイティブな職場では特に、その発想の豊かさを仕事に活用できるシーンが沢山あることでしょう。加えて、少なくとも「喋る」スキルがあることは、人間関係を構築していくにあたっても重要なスキルとなり得ます。例えば、初対面の人と接する時は、探り探り無難なことを話すよりも、「自分はこういう人間です」ということを前面に押し出して話した方が、相手の印象に残りやすいのは確かです。また、自己開示を含めて話していった方が、相手も警戒心を解いてくれて、距離が早く縮まるケースがあるのも事実です。勿論「人の話を聞くこと」の重要性は言うまでもありませんが、喋ることを得意・特技としているのであれば、敢えてその魅力を封じる必要もないのかもしれません。
協調性が求められる日本では、喋り過ぎてしまう子どもは、「変な子ども」認定をされてしまうことも少なくはなく、そのような過去の体験によって自信をなくされてしまったADHDの人もいらっしゃられると思います。しかし、本当に不思議なことに、大人になると、ADHDの人のマシンガントークは「面白い人」「仕事ができる人」として評価されることも多いのです。よって、「喋りすぎ」を改善しようとされるのではなく、自分の強みにするという思考や方向性にシフトしていかれることをお勧めします。例えば、営業職やクリエーターなど、そういう力を発揮できる仕事を目指されたり、「好き」を発信するコミュニティに参加してみたり、何なら自分で立ち上げてみられたりされるのも良いでしょう。このように見方を変えれば、「喋り過ぎ」は立派な才能の一つなのです。
但し、そうは言っても、「最低限の会話のマナー」は守らなくてはいけません。会話はターン制であることを心得ることや、「否定的」なコメントはしないこと…等、その辺りの事柄については、この後で詳しく記載させて頂きます。

これだけは守りたい!「最低限の会話のマナー」
「喋り過ぎる」といった自分の特性を活かしつつ、ある程度は客観視をしながらコミュニケーションを行わないと、相手に不快な思いをさせてしまいます。特に注意したいのが、相手を傷つけてしまう発言やネガティブな話題、自己中心的過ぎる立ち回り等です。そこで、会話をする時には、常に以下の3つを意識されてみて下さい。
❶ 発言する前に「相手がどう思うか?」を考える間を作る
➋ 会話はターン制
❸ 相手の話を広げることを意識する
例えば、相手の髪型を見て「おかしい!」と思ったとしても、それを真っ直ぐ口にするのではなく、まずは「これって言っても大丈夫かな?」と一呼吸置く癖をつけましょう。瞬発的に思ったことを口にしてしまうADHDの人にとっては至難の業ですが、仮にすぐには実践出来なかったとしても、そういう意識を頭に置いておくことがとても大事です。
会話は「ターン制」です。これも厳守しましょう。基本的に会話は「順番」です。時に、立候補制のこともありますが、相手の話を遮ってまで自分の話をすることは絶対に止めましょう。特に初対面の人とは、相手が話し始めたら、インタビュアーになったつもりで色々と質問を投げ掛けてみましょう。
そうしたことを踏まえた上で、会話のスキルを上げるには、後は実践を積むのみです。色々な人と話して、その感覚を掴むしかありません。頭で理解するのではなく、身体感覚として覚え込ませます。話し相手としては、家族や友人よりも、もう少し距離のある人の方が良いでしょう。友達の友達や、社会人サークルで偶に会う人、または美容師さんや行き付けのお店の店員さん等もありでしょう。そこで蓄積される場数や経験値こそが、人と対話する時の自信となって、きっとあなたを助けてくれることでしょう。

当院では、
睡眠障害(不眠症)、不安症、うつ病、躁うつ病、適応障害、
強迫症、摂食障害、月経前症候群(PMS)、統合失調症、
過敏性腸症候群、自律神経失調症、心身症、パニック症など、
皆様の抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
当院では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。
ご自身の能力の凸凹の可能性が気になられる患者様、とりわけ発達障害(ADHDやASD)の可能性を危惧されている患者様は、御診察の際に、その旨を当院医師にお申し出頂けましたら幸いです。
監修者:
新宿ペリカンこころクリニック
院長 佐々木 裕人
資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医
所属学会:日本精神神経学会
参考引用文献:やしろあずき著『すごいADHD特性の使い方』


